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番外編七夕
「ねえさん、見てきます」
廊下に行こうとしたら、
「丁度よかった。玲士は青空と一緒にねえさんを守ってくれ」
蜂谷さんに声を掛けられ、青空さんが部屋に入ってきた。
「青空さん何があったんですか?」
「玄関前にあった七夕の笹の葉が燃えた。内部に詳しい人間が侵入し火をつけたのだろうとハチが」
いつになく険しい表情の青空さん。それほど事態は切迫していた。
「子どもに会いに来たのに会わせないのかよ!」
「会わせないとは一言も言ってないだろ。今何時か、時間を考えろと言ってるんだ。子どもたちは明日も学校だ。六時四十分には起こさないといけない」
「何時かって言われてもスマホがないなら分からな」
ゲラゲラと笑う一央さん。酔っ払ってフラフラしていて立っているのもやっと、そんな感じだった。
道路で寝ているひとがいると通報があり、駆け付けた警察官により保護された一央さん。所持品から身元が判明し、りょうお兄ちゃんのところに連絡が入った。
一晩だけ泊めて欲しい。
夜も遅いから組事務所に泊めるということで話しがまとまり一央さんも納得したはずなのに。組事務所には行かず押し掛けてきた。
「夜も遅いからと遼に言われなかったか?」
「さぁな、忘れた」
「父親が行方知れずになって子どもがどれほど心配していたかわかるか?」
「俺に子供なんかいたっけ?忘れた」
「オヤジ、酔っ払いに何を言っても無駄だ」
鞠家さんと蜂谷さんが一央さんをじろりと睨み付けた。
異変を真っ先に察知し、覃さんに太惺を僕のもとに連れていくように頼んでくれたから、太惺は無事だ。あれほど駄々をこねていたのが嘘のように、何事もなかったようにすやすやとねんねしている。
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