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番外編七夕
「子どもはとうに寝ている時間だもんな。起こしたりしたりして悪かったな。コウジ、光希を頼んだぞ。めぐみを寝かし付けてくるから」
「はい。任せてください」
背筋をぴんと伸ばし即答するコウジさん。
光希さんは顔を赤らめ俯いていた。
「光希さんは縣一家の若い衆みんなから慕われているんだね」
「保健室の先生だった経験が生かされているんだろう」
彼の腕が僕をぎゅっと抱き締めて、優しく体を寄せた。
「人はいつか死んでいく。俺も、いつか両親と吉田のように死ぬだろう。森下がそう言ったんだ」
彼を見上げると、微笑みながら唇を寄せてきて。おでこに軽くキスをされた。
「それはどんなすごい人でも避けられるものではない。大切なひとを失った悲しみや苦しみ。俺たちは少なくてもそれを知っているからこそ、その分幸せになれるはずだ。腕のなかのあたたかさがとても大切だってことを忘れちゃいけない」
「それって一央さんのこと?」
「さぁ、どうかな。実はな未知。日付けが変わる前にキスが出来ますようにって短冊に書いたんだ。だからキス、してもいいか?」
「いつもしているのに……いちいち聞かないでよ」
「なんで?」
「もう遥琉さんの意地悪。分かっているくせに」
「言ってくれないと分からないよ。今年の七夕は今夜しかないだぞ。あと十分しか」
手と手をしっかりと握りしめ、深くかわす口づけに心が満ちる。幸せなひとときが静かに過ぎていった。
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