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番外編七夕

「寝ぼけていただけじゃないの?パパが来る訳ないじゃん。めぐみの嘘つき」 「嘘じゃないもん。パパだったもの」 「だったらパパがいたっていう証拠は?」 「朝っぱら何を騒いでいるんだ?」 彼がめぐみちゃんたちの部屋を覗いた。 「あ、うづきさんだ。ちょうど良かった。あのね。聞いて」 めぐみちゃんが四つん這いの状態で布団から這い出してきた。その時だった。 「パパ、たいへん!」 今度は一太の声が庭から聞こえてきた。 「笹の葉が一本ないってだろ?燃えてしまったからな。こればっかりはどうしようもない」 「燃えたって、うづきさん、それって……」 優輝くんも飛び起きた。 「パパに会えますようにって幸がせっかく書いたのにな。幸にどう説明しようか分からないよ」 幸ちゃんは大の字になり、手を万歳して布団から落ちて畳の上で寝ていた。これだけまわりが賑やかなのに。すやすやと眠っていた。 「内緒にしてもその場限りだ。嘘つきは泥棒さんのはじまりだし、隠さず幸に伝えよう。めぐみ、優輝、朝御飯の準備が出来てるぞ。喧嘩はやめて着替えろ」 行ってきます!と元気いっぱいに小学校へ向かっためぐみちゃんだったけど。エンジンをかけたまま路肩に停車しているシルバーの車の脇を一度は素通りしたあと、なぜかすぐに戻ってきて、とんとんと後部座席のドアを叩いた。 「久し振りだなめぐみ。父さんがいるの、よく分かったな」 スライドドアが開いて、一央さんがぎこちなく笑いながら顔を出した。

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