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番外編七夕

「一央、お前な」 覃さんが声を荒げた。 「覃、俺が言う」 後部座席のドアが開いて、蜂谷さんが顔を出した。 「相変わらずモテモテじゃないか。離婚調停中にいいのか、浮気して。新しい男がいるならもう遼成さんに未練はないだろ?コウジにぼこぼこに殴られたくなかったら、幸に謝る前に光希に謝れ」 「だからなんのことだ?」 「しらばっくれるんじゃねえよ」 蜂谷さんが携帯を操作し、ボイスレコーダーのアプリに録音していた音声を再生した。 「オヤジが帰ってきたらここに来るまで何があったのか詳しく話しを聞かせてくれないか。悪いようにはしないから」 「……」 一央さんの唇がほんの一瞬動いた。 「柚はどうしているかって?子どもたちとまた一緒に暮らす日を夢見て毎日懸命に働いている」 「強いな。さすがは縣の女……」 「俺には子どもがいないから分からない。でもオヤジとねえさんのすぐ側でいつも見ているから分かるんだ。子どもを育てるためにはなりふりなんか構ってはいられない。子のためなら親は鬼にも蛇になれる。へんな思い込みをしているようだが柚はどこにでもいるごく普通の一人の女性だ。強くなる必要なんかないんだよ。一央、橘と柚原がいたらもっと大事になっていたぞ」 幼稚園バスが門の前で停まり、遥香が送迎担当の先生に元気に挨拶をしてから乗り込んでいった。 「はるおねえちゃんバイバイ」 僕と手を繋いだ幸ちゃんが笑顔で手を大きく振り遥香を見送った。 それを見た一央さんはとっさに腰を低くして隠れようとしたけど、 「あ、パパだ!」 その前に幸ちゃんに見つかってしまった。

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