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番外編光希さんの妹さん

「幸ちゃん走ったら危ないよ。お父さんは逃げたりしないからゆっくり歩こうね」 朝の通勤通学のラッシュ時。国道への抜け道になっているのか車の通行量は多い。三十キロ規制にはなっているもののみなかなりのスピードを出している。 本人はまっすぐ走っているつもりでも、前をちゃんと見ていないからか、だんだんと斜めになり道路に向かって走る幸ちゃん。見ているのも危なかしくて。あとを追いかけようとしたら黒い影が目の前を横切った。 「わぁ~~!」 幸ちゃんの体がふわりと浮いた。 「未知さんのいうことを聞かないと駄目だぞ」 「そらさんごめんなさい」 黒い影の正体は青空さんだった。 「転んだら怪我をする。大変だ」 片出でひょっいと軽々と抱き上げた。 もし数秒遅かったら三人並んで自転車をこいでいる高校生と間違いなくぶつかっていた。 こんな状況でも一央さんは我は関せず。 車のドアが開いているんだもの。車を降りる気があれば降りて幸ちゃんに駆け寄ることだって出来るのに。一央さんは微動だにせずため息ばかりついていた。その態度に蜂谷さんと覃さんの眉間に皺がどんどん寄っていった。 大きな紙袋を脇に抱え、紙カップを手に持ちスタスタとこっちに向かってまっすぐに歩いてくる女性が見えた。これだけ強面で大柄の男性が大勢いるのにその女性はさほど気にもとめず近付いてきた。 はじめて会う女性だった。でも不思議と初対面には思えなかった。目のあたりと顔の輪郭が光希さんにとても似ていたからだと思う。 「おはようございます。はじめまして未知さん」 挨拶をされて、 「おはようございます。えっとどちら様ですか?」 「主人と兄がいつもお世話になってます」 女性はにこりと微笑むと、 「あら、あなたが幸ちゃんね。幸ちゃん、おはよう」 幸にも声をかけて脇に抱えていた紙袋を渡した。

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