3428 / 3632

番外編光希さんの妹さん

「ありがと。おねえさん、だあれ?」 「幸ちゃんのおばちゃんだよ。会うのははじめてだよね?おばちゃんは兄から写真を見せてもらっているからすぐに幸ちゃんだって分かったよ。青空さんだよね?悪いけど幸ちゃんに見せたくないから、母屋に連れていってくれる?」 「よく分からないが、分かった」 青空さんが幸ちゃんを抱っこしたまま門を潜るのを確認すると一央さんに早歩きで近付き顔にかみにコップの飲み物をバシャッとかけた。 女性は光希さんの妹さんで、吉崎さんの奥さんでもある茉弓さんだった。 「起きたら兄からの着信があったことに気付いて電話をかけたの。兄とはいつもメールでやり取りしているから、めったなことでは電話を掛けてこない。それが昨夜は着信が二回もあったからただ事じゃない、そう直感したの。兄から福島に来ているのをついさっき聞かされて。なんでもっと早く連絡を寄越してくれなかったのと聞いたら私たちに迷惑を掛けたくなかったの一点張り。父さんと母さんががどれだけ会いたがっていたか、心配していたか、兄さんわかる?」 「ごめんね、茉弓」 「うちに帰ろう。父さんと母さんが待ってるよ」 「あ、でも……」 渋る光希さんの手首を掴む茉弓さん。 「コウジ、玲士、お前ら付いていってやれ」 鞠家さんが顔を出した。 「両親が住む団地にもゆきうさぎ丸が週一回来てくれるようになってすごく助かっています。バスも走っていないし、足腰の弱い高齢者ばかりが住んでいて、雨の日はとくに買い物に行くのも大変だったから。ヤスさんにお礼を言っておいてください」 「役に立てて良かった。ヤスに伝えておく」 鞠家さんが笑顔で返した。

ともだちにシェアしよう!