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番外編光希さんの妹さん
「無理はしてない。ただ……」
「離れて暮らす息子より、近くで孫を大事に育ててくれるナオと信孝さんにうちの両親すごく感謝していた。この前なんか晴が信孝さんとうちに遊びに来てくれて幼稚園の遠足で行った水族館のお土産をもらったって泣いて電話をかけてきた。ナオと信孝さんは両親にとって息子も同然なんだよ。だから茉弓の言う通り遠慮せずに、甘えて欲しい」
「この先で検問をしているようです。脇道に入りますか?Uターンをしますか?」
ハンドルを握る壱東さんが助手席に座る蜂谷さんに聞いた。
「このまま真っ直ぐでいい。100メール先、右手に髙島運輸社員駐車場という看板が見えてくるからそのまま中に入ってくれ」
「私有地に勝手に入って大丈夫ですか?」
「社長の髙島さんは会長と根岸さんの飲み仲間だ。許可はもらってある。駐車場を通り抜ければ、少し狭いが駅前通りに出る」
「分かりました」
壱東さんが大きく頷いた。
蜂谷さんの言う通りすぐ右手に髙島運輸社員駐車場という看板が見えてきた。うっかり見落としそうになるくらい小さな看板だった。
関係者以外立入禁止、通り抜け禁止、無断駐車は罰金一万と書かれた立て看板の前を緊張した面持ちで慎重に通り抜ける壱東さん。
「だからそんなにビビらなくても大丈夫だ」
蜂谷さんがくすりと笑った。
「茉弓さん、待ち合わせ場所は在来線の改札口前で間違いないですよね?」
「はい。お兄ちゃんとナオと未知さんに会えるのがよほど嬉しいみたいで一時間前から待ってます」
「そうですか」
蜂谷さんが壱東さんに駅ビルに併設してある駐車場に入るように指示した。
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