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番外編光希さんの妹さん

「あ、喧嘩を売ってんのか」 「わざとぶつかってきたのはそっちのほうだろ。謝れよ」 残る二人の男性が因縁をつけて蜂谷さんとコウジさんにガンを飛ばしながら高圧的な態度で捲したてた。その間うずくまる男性は痛くもないのに痛い、痛いを大声で連呼し煽るように騒いでいた。買い物客はみな関り合いを持ちたくないのか足早に通り過ぎていった。携帯を手にした店員が心配そうにこっちをチラチラと見ていた。 「ねえさん相手にする必要はない。行きましょう」 蜂谷さんに言われ、ナオさんとドキドキしながらうしろについていった。光希さんが、お兄ちゃんが守るから、絶対に側から離れないんだよ、そう声を掛けながら茉弓さんの手をそっと握った。 「おい、お前ら!」 いきり立ち声を荒げる男性たちがを一切無視してエレベーターに乗り込もうとしたら、 「ぶつかっておいてなんだその態度は!」 びどく腹を立てた顔で、ぶざけんじゃねぇぞと怒鳴りはじめた。肩が痛いと言ってうずくまっていた男が、肩でなく胸のあたりを押さえていた。 「演技が下手だな。どうします?」 「ほっとけ」 目で誰かに合図を送る蜂谷さん。ちらっと見ると、ちょうど鞠家さんがポケットに右手を入れてエレベーターで上ってくるところだった。若い衆が三人、眉ひとつ動かずうしろに立っていた。 「ハチ、相変わらず変なのに絡まれているな。青空に焼きもちを妬かれても知らねぇぞ」 「焼きもちを妬きたければ妬かせておけばいい。カシラ、あとは頼んだぞ」 「おぅ、任せておけ」 すれ違いざま左手をあげる鞠家さん。 「おい、カシラって……」 「あのカシラだよな」 「本物のわけないだろ」 若頭としてますます箔がついた鞠家さんの顔を見るなり、男性たちの顔からさぁーっと血の気がひいていった。

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