3442 / 3632
番外編光希さんの妹さん
「ねぇ、お兄ちゃん。あの人、さっき絡んできた人達の仲間かな?」
「多分そうだと思う。仲間と急に連絡が取れなくなって焦って探し回っているのだと思う」
柚原さんが光希さんと茉弓さんたちに店の中に入るように促した。
「危ないですから未知さんとナオさんも店の中に入ってください。食べ物の恨みは怖いですからね。お土産、お願いしますね」
さっき購入したパイが入った紙袋を渡されると、背中をそっと押された。
「柚原さん、蜂谷さん、どっかで見たことがあるツラだと思ったら、吉柳組の構成員ですよ」
「コウジ、よく覚えてんな」
「出頭を求められてそのままとんずらした重要参考人ですよ」
「だからさっき検問をしていたのか。なるほどな。子どもには罪はない。弱いものを巻き込むわけにはいかない」
二階から下のフロアをちらっと見る蜂谷さん。
「これから先着順でステッカーを配るみたいだ。早く行かないとなくなるぞ」
男の子たちに人気があるヒーロー番組の名前をふたりに聞こえるようにわざと大きな声で口にした。すると、
「あ、そうだった!」
「すっかりわすれてた」
男の子たちが騒ぐのをピタリとやめた。
「パパいくよ」
男の子たちがエレベーターへと向かった。
子どもたちの声が男性に届いていないみたいだった。
「パパ、はやく」「パパ」
何度か呼ばれてようやく気づく男性。
「なんで勝手に行ってんだよ」
イライラしながらベビーカーを強く押した。前をろくすっぽ見ないから、人相の悪い男とぶつかった。ぶつかって初めてことの重大さに気づいたみたいだった。
ともだちにシェアしよう!