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番外編光希さんの妹さん

誰かが警察を呼んだみたいで駅前交番のお巡りさんが二人走ってきた。 「光希は怖くないのか?」 「藪から棒になに?」 「生きるか死ぬか分からない世界で生きていることがだ」 「怖くないといえば嘘になるけど、一人じゃないから。遼成さんと龍成がいつも側にいてくれるから怖くない」 「私も翔さんがいるから怖くない」 光希さんと茉弓さんがきっぱりと言いきった。 「親は子どもがいくつになっても心配するものだ。光希、茉弓、どうか命だけは大切にしてくれ」 「ごめん……」 光希さんがボソッと呟いた。 「平々凡々な人生を選ばなくて本当にごめん」 「あら、そんなことないわよ」 茉友さんが明るく光希さんを励ました。 お巡りさんの一人が蜂谷さんの顔を見るなり嫌悪感を露にした。 「知り合いか?ハチは相変わらずモテモテだな」 「あのな青空、そんなんじゃねぇよ」 紙コップのコーヒーを一口飲む蜂谷さん。 「問題ばかり起こしていたからな。嫌われて当然だ」 「そんなことないだろ」 お巡りさんに事情を話す男性。 「自分に非があることを認めたくないのは分かるが正直に話さないと。あの言い方では誤解を招くぞ」 「俺らが犯人にされたりして」 冗談交じりに話していたらそれが本当になってしまった。 「おぃ、お前重要参考人を逃がしたのか?」 「なんのことだ」 「しらばっくれな」 「俺はおぃっていう名前じゃない」 蜂谷さんは一切取り合わなかった。 「ふざけるな」 屈辱感に身を震わせるお巡りさん。 「俺なんかに構っている暇があるなら仕事をしたらどうです」 「お前に言われなくても分かってる」 お巡りさんがいるあいだは猫を被り被害者面していた男性。 でもいなくなると、ステッカーがなくなっちゃう。泣いて駄々をこねる子どもの頭をうるさいと怒鳴り散らして叩いた。

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