3447 / 3486

番外編光希さんの妹さん

「ねぇ光希、根岸さんの声聞こえなかった?」 「気のせいじゃないかな?根岸さんはいま、縣一家にいるよ」 「あら、そうなの」 茉友さんがとても残念がっていた。理由を聞くと、 「根岸さんが東京に引っ越す前にちゃんとお礼が言いたかったのよ。礼なんかいらないと電話で言われたみたいなんだけど。ねぇあなた。そうでしょ?」 「お、俺?」 目を閉じて店内に流れるBGM を聞いていた敏さん。 「あと誰がいるんですか?」 「すまん。懐かしい音楽が流れていたから夢中になって聞いていて話しを聞いてなかった。もう一回言ってもらっていいか?」 敏さんが苦笑いをしながら頭をくしゃくしゃと掻いた。 「ほら、やっぱり根岸さんだわ。挨拶をしてくる」 茉友さんが席を立ち、お店の外にいる蜂谷さんたちのところに向かった。 「わちゃわちゃしてなんだか楽しそうね。母さんのあんな楽しそうな笑顔を見るの久し振りかも。お兄ちゃんもそう思うでしょ?」 再び目を閉じてBGM に聞き入る敏さん。指でリズムを取りながら、陽気に鼻歌を口ずさんでいた。 焼きもちを妬くように仕向けたい茉弓さんと、我関せず、自分の世界に没頭する敏さん。見ていてなかなか面白い。 光希さんすもとんちんかんな二人のやり取りを呆れながらも優しい眼差しで見守っていた。

ともだちにシェアしよう!