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番外編 盆踊り大会

「斉木先生よ、喧嘩を売ってんのか?」 「正論を言ったまでだ」 男にどんなに凄まれても斉木先生は動じなかった。 「止めとけ。斉木はあの九鬼総業と対等に渡り合った男だぞ。おぃ玲士、客人が帰る。丁重にお見送りしろ」 不意打ちで度会さんに名前を呼ばれた玲士さん。箒を持ったまま慌てて駆けつけた。 「あれ?」 男が不思議そうに首を傾げた。 「どこかで会ったよな?」 「いえ。他人の空似ではないですか?」 縣一家にいたとき客として来た男にお茶を運んだことがある玲士さん。こんなぬるくてまずい茶なんか飲めるか!顔にお茶をぶちまけられ、バカにするようにゲラゲラと笑われた。 忘れたくても忘れられない。名前までは分からないけど、その男の顔は今でもはっきりと覚えていた。 「かの有名な吉柳組の幹部様となればさぞやお忙しいでしょうね。こんな田舎に、遠路わざわざご足労願いご苦労様です」 今すぐにでも箒を振り回したい衝動にかられながらぐっと堪えて、あえて素っ気ない態度を取る玲士さん。 長身の男はじろりと玲士さんを見下ろし、ぶつぶつと独り言を言いながらなにやら考え込んでいた。 「……縣一家……そうだ、縣一家だ。おぃ、お前!」 玲士さんの肩をがしっと乱暴に掴んだ。 「なんでしらばっくれる」 「客人だから何をやっても許される、という訳ではないですよね?」 玲士さんが携帯の画面を男に見せた。

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