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番外編盆踊り大会

「そういえば面白い話しを耳にした」 「面白い話しですか?」 「あぁ。姿をくらました吉柳組の舎弟の手がかりになるかもしれない。同じクラスの保護者が東京に出張で行ったときのことだ。飲みに行こうとした居酒屋の店先に人相の悪い連中がたむろしていたそうだ。店から出てきたのか、これから入るところなのか分からないが、いきがって店に入ろうとした茶髪の若い男たちと、身体が触れた、触れないで喧嘩がはじまったそうだ。その保護者が言うには人相の悪い連中には東北なまりがあった」 「大都会ほど姿をくらますのにうってつけの場所はありませんからね。いくら組から持ち出したのか分かりませんがそのお金で豪遊してあっという間に使いきってしまい、詐欺や恐喝など悪事に手を染めていなければいいですね」 「そうだな。人は追い込まれると何をしでかすか分からないからな。千里に気を付けろと連絡はした」 その時雷鳴が頭上で轟き、園庭にあるテントにでも雷が落ちたのか、稲妻が走り、あたりが焦げ臭くなった。子どもたちの悲鳴と泣き声があちこちから聞こえていた。もはや盆踊りどころではなかった。紗智さんと那和さんとウーさんにブルブルと震えながらしがみつく子どもたち。 「パパ、かなくんが大変」 一太が息を切らせて駆け込んできた。 「どうした一太?」 「バタンっていきなりたおれたの」 「昔のことを思い出したのかもな。分かった、すぐに行く。橘、子どもたちを頼んだ」 一太と向かった先はトイレだった。光希さんとヤスさんが奏音くんに付き添っていた。

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