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番外編盆踊り大会
「私利私欲のために奏音くんと優輝くんを利用しようとするなんて。同じ人間だとは思えない」
彼にふいに肩を抱き寄せられ、おでこにチュッと軽くキスをされた。
「ち、ちょっと遥琉さん」
不意打ちを食らい声が上擦ってしまった。
「怒った未知の顔を久し振りで見たなって。いつ見てもきみは可愛いね」
悪びれる様子もなく愉しげにクスクスと笑う彼。今度は頬っぺたと鼻の先にキスをされた。
ふと一抹の不安が脳裏を過った。
「どうした?心配事でもあるのか?」
「楮山さんの狙いがお姉ちゃんとりょうお兄ちゃんなら、上田さんの狙いは何だろうって思ったの」
「未知はなかなか面白いことを考え付くな。上田は芫をさんざん利用しておきながら用済みとなればあっさりと捨て駒にしたからな。血も涙もない男だ。上田の狙いは……」
彼が顎に手を置いてしばらく考え込んでいた。
「……弓削さん……じゃないかな?」
一番考えたくないことだけど、それしか思い浮かばなかった。
「未知も同じことを考えていたか」
「弓削さんは菱沼組になくてはならない大事な人だもの。人望だってあるし、仲間と後輩想いでみんなから慕われているもの」
「未知の弾よけを失うのはかなりの痛手だ」
「それ本心ですか?焼きもちを妬く相手が一人減って万々歳じゃないんですか?」
橘さんの声が外から聞こえてきたからドキリとした。
「あのな人聞きの悪いことを言うな。変な誤解を招くだろう。俺はな、地竜と子どもたちと、婿と弓削には焼きもちを妬かないと心に決めてんだ」
「へぇ~~そうですか」
「そうやってすぐに人を疑うな」
痛いところをつかれしどろもどろになる彼。やっぱり橘さんが相手だと調子が狂うみたいだった。
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