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番外編盆踊り大会

ガシャーンとガラスの割れる音が一瞬だけ聞こえてきた。 ー車が突っ込んだのかも。オヤジ見てきますー 「弓削、すぐに病室に戻れ。少しは狙われている自覚を持て」 詳しいことまではよく分からないけど、弓削さんは薬物依存症治療を専門とする病院に入院しているみたいだった。 ーまた掛け直しますー それだけ言い残すと電話がぶちっと一方的に切れた。 「オヤジ!」ヤスさんが何度も転びそうになりながら彼に駆け寄った。 「案ずるな。弓削には本部と龍一家と縣一家がついているから大丈夫だ」 「兄貴が強いのは分かってます。心配するだけ無駄ってことも。でも……」 そこで言葉を濁すヤスさん。 「ヤスのその思い、弓削にきっと届いているぜ」 ヤンキー座りをしてヤスさんの頭をぽんぽんと優しく撫でる彼。 「今は頼むから大人しくしててくれ。弓削が退院したら柚原と二人で迎えに行かせるから。いいな」 「分かりました」 子どもを言い聞かすようにゆっくりとした口調でヤスさんを諭す彼。誰一人失いたくないんだ。彼の思いを汲み取りヤスさんは何度も頭を下げた。 「昇龍会が四の五の言いやがるから若いのを呼びつけてやった。上田は自慢げに言い触らしていたみたいだが、本当は乗り込まれているにも関わらず事情を知らない第三者から見たらみたら勝者は神政会だと思うだろ?」 「なるほど。ちょっとやそっとのことでは驚かない上田も今回ばかりは驚いただろよ。まさかこんな形で再会するとは思ってもみなかったはずだ」 十時すぎ。首にタオルを巻いた彼と鞠家さんが連れだって幼稚園から帰ってきた。

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