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番外編コウジさんの後輩

「向こう見ずの性格なんだろう。それにしてもたいしたもんだ。たった一人で乗り込んでくるとは。度胸のよさは認めてやるがな」 「まわりが見えていないんでしょう。ヤツの狙いは俺ですから。卯月さんすみません。よその組で面倒をかけるなとオヤジに口酸っぱく言われていたのに」 コウジさんが軽く頭を下げた。 「過足、お前はそこから動くな」 「でも、兄貴……」 「大丈夫だ。心配すんな」 心配を掛けまいと微笑むコウジさん。 「お前らも手出し不要だ」 男をぐるりと取り囲んだ若い衆に彼が声を掛けた。 「ハチに裏口にまわれと伝えておけ。それと……」 すぐそばにいた若い衆の耳元で短く囁いた。 「分かりました」 大きく頷くと走り出した。 「過足、落ち着け」 「落ち着いてなんかいられません。コウジ兄貴に何かあったら俺……」 「話し合いで解決すれば一番いいんだが、一度絡まってしまった糸をほどくのは至難の技だ。コウジの言葉を信じて待とう」 彼が過足さんの隣に移動した。 心配事でもあるのか落ち着かない様子で廊下を行ったり来たりと歩き回る光希さん。 「嫌な予感がする。橘はよく落ち着いていられるね」 「そう見えますか?」 「千里も橘と同じでちょっとやそっとのことでは動じないよね?」 「まぁ、兄妹ですからね。似て欲しくないところばかり似るので困ったものです」 洗濯かごを両手で抱え庭へ向かった橘さんのあとを追う光希さん。奏音くんはまだ寝ている。

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