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番外編コウジさんの後輩
しおと仲間内で呼ばれていた青年。ほんとうの名前を誰も知らなかった。
「戸籍がないとまわりに漏らしていました。しおという名前は、無愛想で誰に対しても潮対応だからです」
「適当だな」
「そうですか?本人は気に入ってましたよ。今はどうだか分からないけど」
手を何度も洗いべっとりとついた血を洗い流したあと、柄シャツに着替えるコウジさん。
「病院から帰ってきたら自分で洗うんでそのままにしておいてください」
蜂谷さんにぺこっと頭を下げると慌てて飛び出していった。
「相変わらず忙しいヤツだ」
くしゃくしゃに丸められたシャツを広げる蜂谷さん。
「これはひどいな。コウジが無傷だったのが奇跡だ」
その頃ヤスさんは……
「ヤスさんがおれらを守ってくれんだべ?ならいい。じいちゃんは?」
「ばあちゃんがいいなら儂は反対しねぇ」
野菜の仕入れのために過足さんの祖父母のもとを訪ねていた。
朝収穫し袋詰めされたトマトと枝豆を雪うさぎ丸に運び込むヤスさんと佐治さん。
「孫だって立ち直ったんだ。そのしおって子もきっと立ち直れる」
「面倒をかける」
「孫も儂らもいつもヤスさんの世話になっているんだから気にしっさんな」
かなりの深手を負ったものの救急車が到着するまでの適切かつ迅速な止血が功を奏したのか一命を取り留めたしおさん。警察から事情を聞かれたけど、貝のように固く口を閉ざしてしまい一切何も話そうとはしなかった。
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