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番外編 はなももの里

「時間はいくらでもあります。誰とか行ったかちゃんと思い出してくださいね」 満面の笑みを浮かべ微笑む紫さんに、冷水を浴びせられたようにゾクリと震え上がる度会さん。 「そ、そうだ。思い出した。捜査の一環でだ」 「あら~~そうなんですか?新人の若い子、名前なんて言いましたっけ?とても可愛らしいお嬢さんでしたよね?」 「なんで二十年も前のことを覚えているんだ」 畳みかけるように質問攻めされ、度会さんがたじたじになっていた。 「姐さん、黙っていてすみません。言い訳はしません」 コウジさんが写真を光希さんに渡した。 「昔過足としおと三人で一緒に暮らしていたことがあるんです。過足が福島に帰ってしばらくしてからしおが急にいなくなったんです。スマホと荷物は置きっぱなし。財布だけがなくなっていました。これはしおの大事なもの。処分することが出来なかったんです。しおがヤクザになったと風の便りで聞いて、同じ世界で生きていればどこかでばったり会えるんじゃないか。その時返そうと思い持って歩いていました」 「まさかの四角関係?」 「ち、違います。俺たち四人はそんなやましい関係ではありません」 必死に否定するコウジさんに光希さんがクスリと笑った。 光希さんと一緒に写真に写る男の子の顔をじっと見つめた。 「どっちがしおさんなんですか?」 「おそらく右側じゃないかと」 彼は目を見るなりこの男の子が誰かすぐにぴんときた。

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