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番外編 はなももの里
「湯山と一緒にするな。オヤジは来るもの拒まず、俺ら若いのを捨て駒としてでなく人として、えこひいきせずちゃんと平等に扱ってくれる。無駄話はこのくらいにして本題に入る。この写真について聞きたい」
佐治さんがしおさんの膝の上に写真をぽんと置いた。
「右側はお前だな?もう一人は誰だ」
「俺のじゃない。こんな写真知らない。見たこともない」
ぷいっとそっぽを向くしおさん。
「しお、ちゃんと答えっせ。佐治さんは悪いひとじゃねぇぞ」
話しが終わるまで廊下で待っているつもりだったけど、いてもたってもいられず過足さんが病室に入って来た。
「だから俺も知らないんだ。こいつが誰か、俺が聞きたい」
「それどういう意味だ?」
「戸籍がないのはコウジから聞いているだろう。親の顔は知らない。誰だか知らない大人たちに囲まれて育った。この子も俺みたくどこからか連れて来られたんだろう。一緒にいたのはわずか。気付いたときにはいなくなっていた。このなかにいるんだろ?」
「察しがいいな」
「見事に当てたら飴をやる」
青空さんが棒つきのキャンディーを取り出した。
「黙って聞いていれば馬鹿にして。俺、子どもじゃない。そんなので喜ぶわけがない。それよりスマホを返せ」
しおさんが青空さんを睨み付けた。
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