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番外編 はなももの里
「いろんなものを拾ってくることで有名でしたからね。弓削さん今ごろなにをしているんでしょうね」
「神政会と楮山組を相手に鬼ごっこをしているかもな。小才が効き逃げ足が早い弓削を捕まえられたらたいしたもんだ。敵ながら天晴と褒めてやる」
甲崎さんからついさっき連絡があった。
しおさんはもしかしたら虚偽記憶を植え付けられているんじゃないか、そんな話しだった。
写真を詳しく調べてみないとなんともいえないと前置きした上で、写真に写っていた左側の男の子は青空さんでほぼ間違いないだろう。でも右側の男の子は首のところにあるはずの痣がないからしおさんとは別人かも知れないということだった。
「いまどき海堂とシェドを知らないなんてありえないだろ。疑えばきりがないがない」
雨が降る前の陰鬱な空気が立ち込めていた。
「俺やっぱり心配なんで病院に行ってきます」
「遥琉に動くなって言われなかった?」
待てど暮らせど過足さんからなかなか連絡がなくて。痺れをきらし玄関に向かおうとしたコウジさんを光希さんが止めた。
「それはそうですけど」
「心配なのは分かるけど、遥琉の言う通り今は動かないほうがいい。昔の仲間を大切に思うコウジの気持ちは痛いくらい分かる。でも自分のことも大事にしてほしい。コウジを失いたくない」
「姐さん……」
驚いたように目を見張るコウジさん。
「分かりました」
小さく頷くと今にも泣きだしそうな曇天の空を見上げた。
「声を掛けなくていいのか?」
不意に彼に声を掛けられたから心臓が止まるんじゃないか、そのくらい驚いた。
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