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番外編 はなももの里
「遥琉さん頼むから、驚かせないで」
「悪気があった訳じゃない。許せ」
愉しそうにくくくと笑う彼。
「あれ?遥琉だ。出掛けたはずじゃあ」
「忘れ物だ」
彼の顔が急に近付いてきて。気付いた時には頬っぺに軽くキスをされていた。
「未知、行って来る。留守番を頼むな」
笑顔で顔を覗きこまれ、頭をぽんぽんと撫でられた。
「あのね、これ見よがしにイチャイチャしないでくれる?」
「これはあくまで挨拶だ。別にイチャイチャしていないぞ」
「イチャイチャしているようにしか見えないような。気のせい?」
「さぁ、どうだろうな」
ニヤリと笑うと涼しげな色のジャケットを肩に担いだ。
「過足も青空もと欲張るからボロが出たんだ。最初から過足一人にしておけば良かったんだ」
「しおさんはずっと過足さんを騙していたんですか?」
「結果論からすればそうなる」
覃さんがいなくて良かった。心の中でふとそう思った。
「未知さんの言う通りだ。覃がいたら収拾がつかなくなっていたもんな。しおもなかなかの美尻の持ち主だからな。今ごろ覃の餌食になっていた」
なんで分かったの?ドキリとして顔を上げると、
「未知さんの心の声、聞こえてました」
くすりとコウジさんに笑われた。
「海堂の若い頃によく似ているヤスさんの顔を見てもしおは何ら動揺しなかった。それが最初にしおを疑うきっかけになりました」
「仲間想いのコウジさんにとってはとても辛いですよね」
「辛いですけど人生生きていればいろんなことがあります。俺、姐さんと坊っちゃんがいればそれだけで十分幸せなんですよ」
「光希さんが大好きなんですね」
「はい。大好きです。人として尊敬しています」
目をキラキラと輝かせるコウジさん。顔をみるだけで幸せな気持ちが伝わってくる。
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