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番外編 はなももの里
「宇賀神組の手塚です。以後お見知りおきを」
不敵な笑みを浮かべながら軽く会釈する男性。
「なぁ青空」ミツオさんが小声で話し掛けながら青空さんの袖をつんつんと軽く引っ張った。
「あぁヤツのことか。昨日森崎から聞いた話しだが、ヤツは裏方の仕事をしていてあまりというか殆ど顔を出したことがない。組長が倒れ、槙島が入院中で、渋川がとりあえず若頭になり四分五裂になった組を立て直すために手塚を引っ張りだしたらしい」
「ということは、もしかして……」
「国立大学出身のインテリだ。頭はめちゃくちゃいいらしい。でも覃みたく変態なのが玉に瑕と言っていたがな」
「覃みたくって、相当ヤバいヤツじゃん」
ミツオさんの顔から笑顔が消えた。
「飼い主に似てな。ミツオ、オヤジがもうじき着く。それまで我慢だ」
「マジか。青空が守ってくれるんだろ?なら分かった。俺もいっぱしのヤクザだ。オヤジの顔に泥をぬるわけにはいかない」
ミツオさんは腹をくくった。
「写真で見るよりもかわいい子だね」
大人の色気がただ漏れの艶っぽい視線でしおさんを見詰めながら顎をクイと持ち上げる手塚さん。
「旨そうだ」
指先でそろりと唇をなぞった。
「手塚、そいつには彼氏がいる」
「フリーって言っていたぞ。佐治ちゃんを守れたら、褒美に好き勝手にしていいってな」
「鵜呑みにする馬鹿がどこにいる。ちゃんと確認しろ」
「そっちはどうかな?いると思うか?付き合っているヤツ」
「さぁ~~な」
彼が駆け付ける前に呆気なく手塚さんに取り押され気絶させられた若い男性。壁に寄りかかりまだ目が覚めていない。
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