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番外編 はなももの里
「哈罗《ハァールゥオ》 」
(こんにちは)
男性を怖がらせないようににっこりと微笑む覃さん。
「ごめんなさい。どうか許してください」
平蜘蛛のように床に額を擦り付けてひたすら謝り続ける男性。
「口を封じれば借金をチャラにすると言われて……まさか本物のヤクザがいるとはこれっぽっちも思わなくて……」
ことの重大性にようやく気付いたのか、蚊のなくような声で口にするとガタガタと震えだした。
恐らく転売目的でくじを引くために集められたメンバー。お互い名前も連絡先も知らない。
「それだけの理由で人を殺し、人生を棒に振るのかお前は」
彼が諭すように声を掛けた。
「一時間後に迎えに行く。菱沼金融に行けばいいんだろ?」
男性が気絶している間に佐治さんが男性の携帯を確認していた。SNSを利用して親族ではない赤の他人とのお金の貸し借りがあることをわずかの間に突き止めていた。
「森下に聞いたら椎根が関わっているのはほぼ間違いない」
しおさんも若い男性も気付いていなかった。
「闇金だよ、お前らの借金の相手。椎根は根っからの悪党で金の亡者だ。貸した金を回収するためなら手段を選ばない。たとえ子どもでも容赦なく売り飛ばす冷酷な男だ」
「しお、おめさん幾ら借りたんだ?」
「幾らって……五万。その男が言うには株で大儲けして金が捨てるほどある。だから返すのはいつでもいい。もっと貸せる。だからついつい借りてしまって。気付いたらいつのまにか百万を超えていて……」
「俺も、お前と同じだ」
「そだうまい話しがある訳ねえべした。おかしいと思わなかったのか?椎根金融をネットで調べてみろ」
過足さんに言われてようやく事態の深刻さに気付く二人。若い男性が携帯を操作し椎根金融を検索し、マジか。何人も死んでる。愕然としていた。
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