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番外編 はなももの里
「短気は損気だ。怒ってばかりいては話しも先に進まないだろ?そちらの言い分を聞こうか?」
「ソイツが貸した金を返してくれればなにもこんなくそ暑いなか取り立てになんかわざわざ来ない。金を返せないから仕事を紹介してやっているだけだ。それが何か問題でも?」
「そもそも闇金じたい違法だろう?」
「これはあくまで個人間の融資だ。闇金ではない」
さも自分は悪くないと言わんばかりに持論を展開するジロウという男。彼は反論することなくただ黙って聞いていた。
台所で夕飯の準備をしていたら、
「ママ、ままたん、お客さんだよ」
一太が呼びに来てくれた。
「お客さんって誰?」
「えっと……あれ?誰だっけ。忘れちゃった。ぱぱたんたちとお話ししてるよ」
広間のほうを指差した。
しおさんに仮の戸籍を作ってやらないと何もはじまらないって彼が話していたことをふと思い出した。
「もしかして阿部さんかな」
「弁護士が増えすぎて仕事がないと嘆いていましたからね。ここ最近国選弁護人の依頼も入ってこなくなったとも話していましたし。遥琉からしおさんのことを相談されたとき、私は未知さん専属ですからと断ったんです。日頃から何かとお世話になっている阿部さんに相談するのが一番でないかと。義理立てにもなりますし。未知さんの言う通り阿部さんかもしれませんね」
橘さんがくすりと笑った。
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