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番外編 はなももの里
「寺島夫妻は見てくれだけで判断せず俺らを快く迎えてくれた。お陰でとてもいい思い出ができた。紗智たちも人生初の桃狩りの経験が出来て、子どものようにはしゃいでいた」
「そうか。良かったな」
「縣一家に厄介になる前に、紗智たちにいろんな経験をさせてやりたいんです」
斎藤さんと吉村さんを見送ったのち根岸さんと立ち話しをしてから、青空さんを広間に呼び出した彼。
「ごちゃごちゃと難しいことをいっぺんに言われても理解不能だ。要は俺のじいちゃんとばあちゃんかも知れない、ということだろ?」
「どうした?浮かない顔をして。嬉しくないのか?」
「嬉しい。でも分からない。半分、複雑だ。なんの手がかりもなかったのに。なんでだ?なんでこんなにもあっさり分かったんだ?」
「親父と惣一郎さんのお陰だ。詳しいことまでは教えてもらえなかったが、青空の帰りを待つ肉親に生きて会わせてやりたい、それはみな同じ気持ちだ。青空頼む。DNA 検査に協力してくれ」
頭を深々と下げる彼。
「オヤジ頭をあげてくれ。ハチと根岸さんに怒られる」
青空さんが慌てて彼に駆け寄った。
「これが俺のマーか……○✕□……」
何かを呟きながら写真をじっと見つめる青空さん。気がかりなことがあるのか表情はいまいちさえない。
「俺と関わったら最後。命がない。そのことを知っているのか?」
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