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番外編 はなももの里

「離れて暮らす孫が一年ぶりに遊びにきて、盆休みが終わると、じいちゃん、ばあちゃんバイバイ、またね。母親に手を引かれ笑顔で帰っていったそうだ。まさかそれが娘と孫に会う最後になるとはこれぽっちも思わなかったそうだ。娘はおそらくもうこの世にはいない。せめて孫だけは生きていてほしいと近所にある西根神社に毎日願掛けに行っているそうだ。観光客が多いところだからあまり気にも止めなかったが、一ヶ月くらい前、俺らみたいな人相の悪い男たちが西根神社の周辺をうろついていたと話してくれた」 根岸さんが青空さんの前にあぐらをかいて座った。 「青空、秦さんにこのことをちゃんと伝えろ。尊には折を見てちゃんと話してやれ。心を入れ替えて真面目にがんばる青空のことをお天道様はちゃんと見てる。誕生日、じいちゃんとばあちゃんと一緒に祝えるといいな」 根岸さんが優しく声をかけた。 今はそっとしておけ、そう彼に何度も言われたけど。 「青空さん、家の中に入ってください。蚊に刺されますよ」 どうしてもほっとけなくて。縁側に座り微動だにせず手元の写真を眺めている青空さんにおそるおそる声をかけてみた。 「ねえさん、記憶にないものを思い出すのはなかなか大変だな」 くすりと苦笑いを浮かべた。

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