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番外編 はなももの里
「写真見せてもらいました。すごく綺麗なひとですよね。身長がモデル並みにすらっとしてて。華奢で。青空さんはきっとお母さんに似たんですね」
「そうかな?そうだといいが。会ったことがないからよく分からない。でも驚いた。まさかねえさんに励まされる日が来るとは。ハチに頼まれたか?」
「えっと、その……」
図星だったから返答に困ってしまった。
「冷蔵庫で冷やしていた桃を一緒に食べたいって言ってました」
「そうか。桃の他に林檎も少しだけ作っていると聞いた。福島は果物が旨いからな。腹一杯食えるかな」
「孫は目に入れても痛くないってよくいいます」
「こんなだぞ」
全身に彫られたドクロの入れ墨を哀しげに見つめ
た。
「根岸さんが見てくれだけで判断しなかったって。その言葉に嘘偽りはありません」
「きっぱり言うんだな」
青空さんがクスクスと笑い出した。やっぱり青空さんには悲しい顔より笑顔のほうがよく似合う。
「マーいた」
紗智さんが嬉しそうに駆け寄ってきた。
「バーバがマーがいないって、泣きそうな顔で探していたよ。しつこくするから嫌われるんだって橘さんに言われてしょげていた」
「すぐ戻らないとね」
がっくりと肩を落とす彼の姿が目に浮かぶようだった。
「青空にどうしても伝えたいことがあるんだ。血が繋がっていなくてそんなの関係ない。今すぐにでも会いたいって話してたよ。ご主人のほうはまったく喋らないの。その分奥さんのほうが喋っていてね。那和と亜優を見て孫も生きていればこのくらいになっているんだって話してくれた。遠慮しないでくいっせ、くいっせって桃や饅頭を食べさせてくれた。社交的なひと?そんな感じだった」
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