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番外編 ただいま
お昼過ぎ。思いがけない人が訪ねてきたから驚いた。
「お袋がなんでここにいるんだよ」
僕よりも驚いていたのは蜂谷さんだった。寝耳に水だったみたいでしばらくぽかんとしていた。
「最初に言っておくけど、別に昴士に会いに来た訳じゃないわよ。一太くんの声を聞いたら無性に会いたくなっちゃってね。惣一郎さんと行く?行っちゃう?ペンションちょうどお休みだし。聡太くんはここ最近は熱を出さないし。もし保育園からお迎えをお願いしますって電話が来たらその時は考えればいいかなって。だって思い立ったが吉日。善は急げってよく言うでしょう」
「もしかして父さんもいるのか?」
「当たり前でしょう。一人だけ置いてこれないでしょう。度会さんに挨拶しているわ。みなさん、うちの息子がお世話になってます」
庭掃除をする若い衆に挨拶する和江さん。
「恥ずかしいから止めてくれよ」
「あらなんで?」
「なんでもだよ」
「昴士、青空さんと譲治さんは?」
「心配しなくてもちゃんといる」
誰にでもフレンドリーな和江さんに冷や汗をかきながらあたふたする蜂谷さん。漫才をしているようで面白い。
「蜂谷さん、和江さんの声が聞こえたような気がしたんだけど。まさかね、ここにいる訳……」
紫さんがひょっこりと顔を出した。
「嘘~~あらやだ~~」
口元を両手で覆う紫さん。思いがけない再会に驚いて手が震えていた。
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