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番外編 ただいま

「たんしゃんあそば」 遥香が覃さんに駆け寄った。 「まずは腹ごしらえだ。朝から何も食べていない。さっきから何かを入れろと騒いでいる」 お腹を擦る覃さんに、 「たんしゃんしんじゃったらはるちゃんなくからね」 目を潤ませる遥香。 「心配してくれてありがとうな。はるちゃんは将来ママみたいなとってもすてきな姐さんになれるぞ」 しゃがみこみ同じ目線になる覃さん。にこりと微笑むと頭をぽんぽんと優しく撫でてくれた。 「暴対法を改正する動きもあるし、いまどき若い連中にはヤクザさんぞ流行らない。子どもたちが成長するまで菱沼組が存続するか怪しいが、倅と嫁がいれば何とかなるだろう」 「相変わらず上総は楽観的だな」 「そうか?」 「そうだよ」 お義父さんとお祖父ちゃんと惣一郎さんが和やかなムードでそんな会話を交わしていた。 「そういえば遼禅の話し、聞いたか?」 「アレは縣一家の面汚しだ。いつも尻拭いさせられる遼成がかわいそうだ」 「遼成に親子の縁を切られても迷惑ばかりかけて。苦労と気苦労で光希も体調を崩すのも無理がない。一時期でも実家に帰って来れて良かった」 「すっかり元気になったみたいだし、顔を見て安心した」 言葉には出さないだけで光希さんのことをすごく心配していたお義父さんたち。光希さんの明るい笑顔を見てひと安心したみたいだった。

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