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番外編 おかえり
「その光景が目に浮かぶようです。遥琉さんも保育参観や授業参観のときはお義父さんみたく一人で騒いで、子どもたちを撮影しています。やっぱり親子ですね」
「困ったことに似なくてもいいところまでそっくりですからね」
「そうですね」
橘さんと目が合うなり笑いがこぼれた。
「あの橘さん……遥琉さんが心配していたんですが……」
「しおさんと名無しの権兵衛さんのことですか?」
「はい、そうです」
「進展はありませんがよい方向に向かうように祈るしかありません。名無しの権兵衛さん、宇賀神組でとても可愛がってもらっているみたいですよ。名前を名乗らないから渋川さんにナナシと呼ばれています」
「ナナシか。そのまんまじゃねぇか。ネーミングセンスがいまいちなんだよ、渋谷は。もうちょいちゃんとした名前を付けてやればいいのにな」
彼が戻ってきた。
「橘、柚原が探していたぞ」
「家の中にはいるのですからいちいち探さなくてもいいのに」
「もしかして喧嘩でもしたのか?」
ぶっきらぼうな言い方をした橘さんにすぐにピンときた彼。
「珍しいなお前らが喧嘩するなんて」
「ふつう喧嘩くらいしますよ。私は未知さんみたいに辛抱強く従順ではないので。良かったですね。いつも一歩後ろに下がって黙って付いてきてくれる未知さんが奥さまになられて」
「嫌味にしか聞こえないんだが気のせいか?」
「えぇ、気のせいですよ」
プイッとそっぽを向く橘さん。
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