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番外編 おかえり

これから葬儀所に行くみたいで二人とも喪服を着ていた。外での作業が多いからか顔は日に焼けて、白髪まじりだった。 「初めまして。卯月未知です」 緊張からか声が震えていつもより早口になってしまった。 「孫が世話になってます」 「まだ孫だとは決まってないでしょ?」 「何言ってんだ。青空は孫に決まってる」 「あ、あの……」 口喧嘩をはじめた二人。 「とても仲がいいんですね。羨ましいです」 「あら~~やだわ」 奥さんはがらがらした人で、旦那さんのほうは口数が少ない。彼の言っていた通りだ。二人ともニコニコと笑っていて話しぶりから人柄の良さが伝わってくる。 「朝早くからすみませんね。青空さんの笑った顔と声が娘に似てて、どうしても会いたくなってしまったんです」 「そうですか。青空さんもお二人に会うのをすごく楽しみにしていました。いろいろと忙しいみたいで会いに行くと言いながらまだ会いに行けなくてすみませんでした」 「忙しいのは分かっていますので気にしないでください」 奥さんがちらっと光希さんの顔を見た。 「どこかで会ってませんか?」 「いえ、会ってませんが……紹介が遅れました。縣光希です、はじめまして」 光希さんが軽く頭を下げた。解せないことがあるのか奥さんが不思議そうに首を傾げていた。

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