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番外編 おかえり

「悠仁や瀧田みたく普段は優しい夫と父親を演じていたんだろう。そうやって周囲の目を欺きうまく生きてきたんだろう。妻子の犠牲のもとに得た幸せほどはかないものはないのにな」 さっきからメールの着信音が鳴りっぱなしの彼の携帯をお祖父ちゃんがじっと見つめた。 「相変わらず仕事が早いな」 「みな手柄を立てようと必死ですからね」 「若い衆にとって千ちゃんに褒めてもらうのがある意味勲章みたいなモンだからな。それと……」 何気にお祖父ちゃんと目が合った。 「未知にもな」 え!?なんで僕?首をぶんぶんと横に振った。 「俄然やる気になるだろう?遼成と裕貴と蒼生がそのいい例だ。会えば喧嘩で険悪だったのに今ではすっかり仲良しこよしだ」 思ってもみなかった答えが返ってきたから驚いた。 「お兄ちゃんたちそんなに仲が悪かったんですか?」 「昔はな」 くくっと思い出し笑いをするお祖父ちゃん。お義父さんもつられて笑い出した。 「オヤジ」 信孝さんが顔を出した。 「おじちゃんこんにちはー」 ニコニコと愛くるしい笑顔をふりまきながら後ろからひょっこり顔を出したのは晴くんだった。未来くんは恥ずかしいのか俯いてモジモジして手わすらをしていた。 「未来、挨拶は?」 なかなか挨拶しようとしない未来くんに業を煮やした信孝さんが声を掛けるとまた後ろに隠れてしまってしまった。

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