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番外編 おかえり
「十五年前のことなんていちいち覚えてないだろ?」
一太にすぐに来てくださいと電話で頼まれた鞠家さんが組事務所からすっ飛んできた。
「いや、弓削なら覚えている」
きっぱり言い切った柚原さん。
「このガラケーに見覚えがある」
鯖児湯の前で撮影した写真の後ろに偶然にも弓削さんらしき二十歳前後の若い男性が写りこんでいた。携帯を片手に鯖児湯を見上げているような、そんな写真だ。
「額田さんは日本を発つ前日にDNAバンクに登録しました。命を狙われ、それどころではなかったのに……福光さんには隠し子がいる。その人の消息がつかめないからナオさんが身代わりになったんですよね?すみません、変なことを聞いて……」
「いや、変なことではない。気になることはなんでも聞いてくれって言ったのは俺だし、なぁ、カシラ?」
「あぁ。もしかしてねえさんは青空がその隠し子かも知れない。そう思っているんですか?」
「はい。突拍子でもないことだけど、ないとも限らないのかなって。僕の戯言だと思って受け流してください。福光さんはただの暇潰しだったかも知れないけど相手の女性が妊娠してしまい、産みたいと言ったはずです。でも選挙間近でスキャンダルを恐れた福光さんは女性に子どもを堕ろすように言ったはずです。もしかしたら側近に今後面倒なことになる、揉め事は避けたいと、女性を消せと命じたら?」
「福光のまわりにいる連中ならやりかねないな」
「でも女性は生き延びてひそかに子供を産んだ」
「額田さんは青空さんに会ってすぐにぴんと来たんじゃないですか。青空さんはお母さんにとてもよく似ています。考えたくはないけど、そう考えればろくに捜査もせず遺体が見付からないのに自殺として処理し闇に葬ったことに納得出来ます」
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