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番外編 おかえり

「ごめんなさい、遅くなって」 ナオさんが菱沼金融から帰ってきたのは青空さんたちが飯坂に出発して十分後のことだった。 どんぶり勘定で帳簿をちゃんとつけてこなかったツケが今になって回ってきたんだろうって彼が。ナオさんは菱沼金融にはなくてはならない存在だ。 「もう少し早く帰ってきたら寺嶋さん夫婦に会えたんだぞ」 「これでも急いで帰ってきたんだけど、急いでいるときに限って内環が渋滞していたり、前の車が遅かったりで、なかなかちょうどしないね。信孝さん、寺嶋さん夫婦ってどんな感じの人だった?」 「どんな感じって聞かれてもな。めっぽう涙脆くて、にこにこといつも笑っているごく普通のおじいちゃんとおばあちゃんだ」 「青空さん探していた肉親にようやく会えて本当に良かったね。どうしたの、信孝さん浮かない顔をして。何かあったの?」 「ついさっきオヤジとカシラから話しがあってな」 「悪い話し?」 「いや、そうじゃない」 信孝さんが首を横に振った。ナオさんに隠し事はしない約束だ。でも誰よりも大切な存在だからよけいな心配を掛けさせたくない。話すか話さないか、悩みに悩んだ信孝さん。

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