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番外編 おかえり
「いくら報道規制がかかっていても、ネット民はこのまま黙っていないと思うよ。警察に対する不信感を持っている人はいるから。未知、光希さん、そろそろ寝ませんか?」
「そうだね。そのうちコウジとヤスも帰ってくるだろうし」
光希さんとナオさんと何気に目があった。
「未知、たまには一緒に寝ようよ」
二人にがばっと抱きつかれ、バランスを崩しそのまま布団の上に倒れこんだ。
「遼さんと遥琉が焼きもちを妬いている姿が目に浮かぶ。未知は遥琉だけの未知じゃないよ」
「信孝さんばかり卯月さんに甘えてズルい。僕だって未知に甘えたいのに。自分のことを棚にあげてダメだって言うし。未知、一緒に寝ようよ」
光希さんとナオさんが愉しそうにくすくすと笑い出した。
その頃彼と信孝さんはというと。
「ナオの言い分も一理ある。聞こえているのに寝たフリをするな」
信孝さんは彼にしがみついまま寝てしまった。いや正確にいえばまだ寝ていない。起きている。
「昔はこんなに甘えん坊じゃなかっただろう?日々のストレスとか色々あると思うが、甘える相手が違う。小さな子供がいるとなかなかナオと二人きりになれないのは分かる。俺もお前と同じだから。でもな信孝」
「長い人生で見たらほんの一瞬の出来事ってだろ?寺嶋さん夫婦はその一瞬の出来事すら理不尽にも奪われた。孫は帰ってきても娘がまだ見付からないんだ。手放しでは喜べない夫婦の気持ちを考えたらやるせなくなる。オヤジは?」
「俺も信孝と同じ気持ちだ」
「良かった」
彼の体にぎゅっとしがみつく信孝さん。大好きなオヤジを一人占めする出来て嬉しそうに頬を服にスリスリしていた。
「お互い理解ある伴侶で良かったな……」
小さな声でそう呟く彼。信孝さんがうん、うん、と頷いていた。
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