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番外編 おかえり
「あぁ。最初に会ったとき他人にはどうしても思えなかった。つかぬことを聞きますが吉村さんはどんな用で?」
「壊れてしまった携帯から写真のデータを取り出せないか、卯月さんから直々に頼まれたんです。私にとって雲の上の存在である卯月さんからまさか声を掛けてもらえるなんて思ってもみなかったのですごく嬉しかったんです。俄然やる気が出ました」
目をキラキラと輝かせる吉村さん。
「あなたも信孝と一緒で卯月が大好きなんですね。見ていれば分かります。一つだけ忠告しておきます。命が惜しかったら信孝を敵にまわさないほうがいい。信孝ほど焼きもちやきでめんどくさい男はいないからな」
「そういうお前さんはどうなんだ?自分もそうだろ?吉村にかずけるな」
「茨木さんそれ以上は禁句でお願いします」
冷静沈着な吉崎さんが珍しく慌てていた。
「みんなオヤジが大好きだから、ねっぱって寝ている。どうだ、混ざってきたらどうだ?」
エプロン姿が相変わらずよく似合う柚原さんが洗濯機で洗ったシーツと毛布を両手に抱えスタスタと歩いてきた。
「おい、柚原」
お祖父ちゃんが声を掛けると足をとめ、すぐに飛んできた。
「奏音の泣き声が聞こえたような気がしたが、それだったか」
「昔のことがいまだにフラッシュバックするみたいで、小二になってまでおねしょをしてごめんなさい。パパ許して。もうしないから許して。額を擦り付けて泣いて謝るんですよ。ひとしきり泣いてからふと我に返ると不思議なもので何も覚えてないんです。そんな奏音を見るのが辛くて。抱き締めてやるしことしか出来ない自分に腹が立ちます」
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