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 番外編 おかえり

「驚かせてすみません」 斎藤さんが眉間に皺を寄せて険しい表情で二人のやりとりをじっと見つめていた。 「斎藤さん、あ、あの……」 近付かないでくれオーラがただ漏れで怖い顔をしている斎藤さんにおっかなびっくり声を掛けてみた。朝から怖い顔をしていたら一日中ずっと不機嫌のままだもの。お節介は百も承知だったけどどうしてもほっとけなかった。 「斎藤、レッツラゴーだ」 どんと背中を押したのはヤスさんだった。 「ねえさんに対してどんなツラをしてんだ。喧嘩を売っているようにしか見えないぞ」 「断じてそんなことは……」 慌てて首を横に振る斎藤さん。 「じゃあこれは?」 携帯の画面を見せた。 「いつの間に……」 「ついさっきだ」 ヤスさんがぼぞっと呟いた。僕も撮られていることに全然気が付かなかった。 「お蔭で弓削と地竜に送るベストショットが撮れました。ねえさんありがとうございます。すごく喜びます」 「驚いた顔はいいですけど、あっぱ口を開けた顔だけはお願いですから送らないで下さい」 「何でですか?可愛いのに」 ヤスさんの口振りからすでに地竜さんに送信済みだと気付いた。 「ヤスさん、その写真お姉ちゃんとお兄ちゃんたちには送ってないですよね?」 「送りましたよ」 しれっとして答えるヤスさん。 「いいじゃないですか減るものでもないですし。ねえさんと子どもたちは俺らの癒しです」 鼻歌を口ずさみ楽しそうだった。どんな写真を送ったんだろう。恥ずかしくて穴があったら今すぐにでも入りたかった。

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