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番外編 おかえり
「この人、あの人に似ているような気がして。でも他人の空似かも知れないし。全然自信がないんですけど」
「女は化けますからね」
「女でなくても化けるよ、千里とチカみたくね。確かに綺麗な人だけど、俺は千里とチカのほうが綺麗だと思う」
「光希さん、チカさんはともかく、千里を褒めてもなにも出てきませんよ。それに噂をすれば影です。千里から電話がかかってきます。またややこしいことになります」
「そのときはそのときだよ」
「相変わらずポジティブですね」
橘さんがくすりと笑った。
「未知さん、あの人というのは?」
「えっとその……まゆこさんです。いつみさんなら年が違いすぎます。もしまゆこさんじゃなかったらまゆこさんのすでに亡くなっている二人のお姉さんのどちらかじゃないかと。顔は見たことがありませんが姉妹なら似ているんじゃないかなって」
「なるほど。実は私も光希さんもこの写真をはじめて見たときそうじゃないかなと思っていました。関西に本部を置く九鬼総業の組長がなぜわざわざ遠く離れた福島に足繫く通っていたのかその理由も明らかになるかも知れませんね」
「この女がまゆこだと仮定して、そうなるとコイツは若いころの善栄ということになるのか」
「いや、善栄ではない」
「老眼だからよく見えんが茨木がそう言うならそうだろう」
「どっかで見たことがあるツラなんだよな」
朝稽古のあと縁側に移動したお祖父ちゃん。お義父さんと並んで座りお茶を飲んで談笑していたところに彼が例の写真を持って来てこの二人に心当たりはないかと尋ねた。
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