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番外編 おかえり

「あ、そういえば……」 お義父さんが何かを思い出したみたいだった。 「宇賀神組の槙島は確か腕に蛇と牡丹、背中に宝珠を握った龍と琵琶を抱く弁天の入れ墨をしていなかったか?」 「渋川に直接聞いたらどうだ」 「変に勘繰られるぞ」 「遥琉に聞いてもらえばいいんだよ。渋川だって遥琉の声を聞きたいはずだ」 「信孝がまた焼もちを妬くな」 お義父さんがやれやれとため息をついた。 「みんな遥琉が大好きなんだからしょうがないだろう。お前さんが昔うちの倅は人の世話ばかりして。一円の得にもならんのに。馬鹿息子だと遥琉を馬鹿にしていたことを素直に謝るべきだ。遥琉がそうやって面倒みてきたからこそ組は違えどいざというときはみな協力してくれるだろ?」 「そんなことを言ったか?全然覚えていないな」 お義父さんが笑って誤魔化した。 「そうやって都合の悪いことばかり忘れていたらそのうち遥琉にそっぽを向かれても知らねぇぞ。孫に会わせてもらえなくなるぞ。それでいいのか?ひとり寂しい老後を過ごすか、嫁と孫に囲まれてにぎやかな老後を過ごすか、選ぶのは上総、お前さん自身だ。よく考えるんだな」

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