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番外編 おかえり
「本当は寺嶋夫妻に会って一言謝りたいんでしょう?」
光希さんの言葉にどきっとする吉崎さん。
「光希はなんでもお見通しだな」
「自分の目で確かめてくればいい。茉弓に渡そうかと思ってもタイミングが悪くて。吉崎さんから渡してくれない?」
光希さんが差し出したのは飯坂温泉にある旅館の予約券だった。
「さすがは縣一家の姐さん。手回しがいい」
「吉崎さん、余計なお世話かも知れないけど、この際だから福光と堂々と名乗ったら?仕事上三つの苗字を使い分けているのは分かるけど、真が言ってたよ。僕のお父さんは一体何者なの、危ない人じゃないよねって」
「真がそんなことを……」
「まっとうな人生を歩いてんだ。遠慮してこそこそ隠れる必要はない。そうだろ?《《翔》》。あと呼び捨てにしてくれ。俺のほうが年下なんだ。他人行儀はなしだ。どうした?」
胸を押さえた吉崎さん。どこか具合が悪いのかと聞いたら、彼に名前で呼んでもらえたのがよっぽど嬉しかったみたいで、胸がドキドキして今にも心臓が飛び出しそうです、そう答えた。
「信孝ばかりズルい、俺もって愚痴っていたから。良かった」
「光希、それ以上は禁句だ」
吉崎さんが慌てていた。
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