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番外編 おかえり
その頃蜂谷さんと柚原さんは台所にいた。たまには蚊帳の外も悪くないな。そんな会話を交わして。
「桃に饅頭にラジウム卵。食べている写真ばかり送ってくる。仲良しトリオには参ったな」
「年も近いし、お互い気心が知れて言いたいことを言い合えるから一緒にいても気疲れしないんだろう」
次に鯖児湯の前で笑顔で写る写真が送信されてきた。
「玲士も佐治もいいツラをしている」
「亜優と渋川が見たら泣いて喜ぶな」
「そうだな。何かひとつでも思い出せばいいんだが……」
蜂谷さんが心配そうに携帯を眺めた。
「そういえば西根神社の近くに昔からやっているこじんまりとした喫茶店があるみたいだ。写真が壁一面に貼られてあって、来店した客が自由に書けるノートがあると寺嶋さんが話していた。十五年前、青空も母親に連れられて何度か喫茶店に行ったらしい。その当時のノートがあれば何か手がかりが掴めるかもしれない」
「十三年前に震災があったからな。難しいかもな」
二人がそんなことを話していたら、
「はれくんいますか?」
元気な声が聞こえてきて。真くんがひょっこりと顔を出した。
「ぶんぶんにいちゃんとゆずにいちゃんだ。おはよー」
「おはよう真。そこは晴じゃなくてパパいますか?じゃねぇのか。パパ泣いちまうぞ」
蜂谷さんが苦笑いを浮かべた。
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