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番外編 おかえり

「そんなことを言ったら本当に来るぞ。弾よけもつけずに」 「運良く鷲崎さんに見付からず出てこれたとしても森崎さんの目を誤魔化すことは出来ません」 「それはそうだけど……」 はぁ~~とため息をつく柚原さん。 「森崎さん、そろそろ久弥さんに会いたい頃だと思うんですよ」 「昼夜問わずの電話魔だからな。この際だから久弥の睡眠不足の原因はお前だってことを森崎に教えてやります」 「子どもたちと光希さんが帰ってしまったら寂しくなるねって話をしていたんです。七海さんが来てくれるなら子どもたちも大喜びです」 ―未知、ありがとー。嬉しい― 電話越しから七海さんの弾んだ声が聞こえてきた。 「七海、まずは鷲崎と話せ。誤解を解くのが先だ」 ―ゴメン、柚原。もう家を出てきた。新幹線のなか― 誰も予想していなかった一言に、一瞬動きが止まる柚原さん。 ―森崎がいるから大丈夫― 「あのな七海……おい!」 ブチッと一方的に電話が切れてしまった。 「きっとトンネルの中に入ったんですよ」 「それならあと十分もしたら到着する。オヤジ、一大事だ」 柚原さんが彼に声を掛けた。

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