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番外編 おかえり

「ちゃんと説明してもらっていいですか?これで何度目の家出ですか?」 「多分四回か五回かな。ちゃんと説明するから、頼むから怒らないで欲しい」 玄関先で出迎えた橘さんに両手を合わせて謝る七海さん。 「その男性は目が不自由で、横断歩道の前に突っ立っているから邪魔だって通行人に言われて、揉みくちゃにされていた。だからお手伝いしますか?って声を掛けた。男性が落とした名刺入れを拾って渡そうとしたときに挟んであった名刺が二枚下に落ちたんだ。それを拾って何気に見たら額田さんと福光礼さんの名刺だったんだ。驚いているのが伝わったんだと思う。辞めた議員のことなどみなすぐ忘れるのに。なぜ知っているんですかと聞かれたから、思わずぽろっと言ってしまったんだ。翔さんの友人だって」 「それで?」 「その人、翔さん生きているんですか?良かった。突然いなくなるから、ずっと身を案じていたんですって泣き出したんだ。寺嶋空に会いたい。どうしても話さないといけないことがある。だから警察に行こうとしている。でもこのまま行って、馬鹿正直に話してもきっと揉み消されるんじゃないか、直感的にそう感じて、空は菱沼組に厄介になっているから警察に行くのは待ってくと止めたんだ。いきなり行っても会えないから、ちゃんと会えるように段取りをつけるからって待ってくれと頼んだんだ」

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