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番外編 おかえり
「久弥がどこにいるか知ってるか?誰に聞いても教えてくれなんだ。ひどいと思わないか?」
「若い衆なりに気を遣っているんですよ。心に受けた傷はそう簡単には癒えませんからね。菱沼金融に行けば久弥さんに会えますよ。まだ怖いみたいで包丁を握ると震えるが止まらなくなるみたいですが、包丁の手入れだけは欠かさず毎日していますので、そのうちまた握れるようになるんじゃないかなと思います。弓削さんももうじき帰ってきますし」
「駅の構内に赤い提灯が飾ってあるのを見るとうねめ祭りが近いんだって実感が湧く。卯月さんはすごい。バイタリティーあふれる人を見ていると、自分も元気になれるから不思議だ」
「遥琉の元気の源は未知さんと子どもたちですからね。三足のわらじを履いて毎日気合いを入れて頑張ってますよ」
「うちのねえさん、弓削が帰ってくるまでオヤジのところに帰らないつもりです」
「たまにはいいんじゃないですか。七海さんが側にいるのが当たり前で、ありがたみを感じる大切さというものを思い出すいい機会です」
「相変わらず橘は手厳しいな」
「その台詞そっくりお返しします。それはそうと森崎さん、吉柳組のことですが」
「俺もその事でオヤジから言伝てを預かっている。卯月さんが帰ってくるのを真くんと遊んで待っています。真くんおじちゃんと遊ぼうか?」
じっと見詰められ恥ずかしくなったのか橘さんの後ろに隠れる真くん。
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