3594 / 3630

番外編 おかえり

「新婚なのにフーはよくまぁ我慢しているな」 「奈娜が寝ているときにちょっかいを出してはりんりんに怒られてしゅんとしている。狂犬も飼い主の前ではただの犬。可愛いもんだぞ。そういえば奈娜と真、会うのが初めてだったな」 「頭の中にクエスチョンマ―クが付いてますよ、きっと。俺でさえ間違えたんですから」 「おはよ―」奈娜ちゃんが晴くんなのになんか違うと恐らくそんなことを言っているんだと思うけど、真くんの手を掴み引っ張ってきた。 「はるせんせ―、ぼくははれじゃないよ。しんだっていってるのに。どうしたらいい?」 「そうだな。それは困ったな」 彼がしゃがみんで二人の顔を笑顔で覗きこんで、交互に頭を撫でた。 「例えばの話し。槙島は子どもを使って空を連れ出した。子どもは純粋だからなんの疑いも待たず一人でいた青空に一緒に遊ぼう、もしくは迷子になったと声を掛けて近付いた」 「まゆこは青空の母親に電話を掛けて子どもを誘拐した。返して欲しかったら福光の事務所から持ち出したモノを渡せとでも脅したんだろう」 「でもそのあと槙島とまゆこが予想していなかったことが起きたんだろう。金は魔物だ。人を変えてしまう。槙島とまゆこは青空に会っている。勘の鋭い二人のことだ。もしかしたら気付いたのかも知れない。直司さんにマズいことになったと連絡し、直司さんは秘書やおともだちの議員に頼んで各所に圧力をかけた。青空の存在を世間に知られたら非常にマズいことになる。となれば話しの辻褄が合うだろ?」 「なるほどな。大陸に売り飛ばした隠し子が生きるために殺し屋になった。これほどのスキャンダルはないからな。マスコミはこぞって報道し、福光の政界復帰は完全に断たれてしまう」 「それを良しとしない輩が裏で蠢いているのは確かだ。青空に喧嘩を売るなんぞ命がいくつあっても足りない。直司さんがどう出るかだ。高みの見物といこうか」 彼が懐から黒い手帳を取り出すとニヤリと笑った。

ともだちにシェアしよう!