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番外編 おかえり
「未知、どうしたの?さっきからため息ばかりついて」
陽葵をあやしながらあれこれ考え事をしていたら七海さんに声を掛けられた。
「遥琉と二人きりになりたくても恋敵が多すぎて近寄れないからストレスがどんどんたまる一方なんですよ」
橘さんが隣に腰を下ろしてきて、陽葵の頬を指先でちょんちょんと撫でてくれた。
「子どもたちはなかなか寝てくれないし、夜泣きはするし、話しだけでも聞いてもらえれば少しは気持ちも軽くなるんだけど。俺で良かったら聞くよ。愚痴でも文句でもなんでもいいよ」
「七海さんありがとう」
「そういえば譲治は?」
あたりをキョロキョロと見回す七海さん。
「ヤスさんと市場に買い出しに行ってます。そろそろ帰ってくる頃だと思うんですけど、遅いですね」
喫茶店にでも入ってコーヒーを飲んでいるのかな?急に心配になってきた。
小さな町だから、死んだはずの寺嶋農園の孫が十五年振りに生きて帰ってきたと、あっという間に広がった。最初こそ髑髏の刺青にビビりまくっていた親戚たちも、笑ったときの顔が母親によく似ている青空さんに、よく帰ってきたな、と声を掛けてくれて。再会出来たことを心の底から喜んでくれた。二つある地元新聞が揃ってネットニュースで青空さんのことを取り上げてくれた。
(遥琉さんいた)
やっと寝てくれた陽葵を七海さんたちにお願いして彼の姿を探していたら、縁側で庭を眺めながらお祖父ちゃんと度会さんたちと何やら話し込んでいた。
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