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番外編 おかえり
「圧力をもろともしない。福光さんにとってはとんだ誤算だったな」
「一介のヤクザに対して火消しに躍起になればなるほど限りなくクロになる」
「これでほぼ間違いないな」
険しい表情を浮かべる三人。やっぱり声を掛けないほうがいいかな。子どもたちがいる部屋に戻ろうとしたら、
「遥琉に用事があるんだろ?」
お祖父ちゃんに声を掛けられたからギクッとした。
「やっぱりいいです。あとにします」
七海さんや紗智さんたちに、たまには甘えてモヤモヤを吹き飛ばしたらって言われてきたとは口が裂けても言えないもの。
「遥琉にお邪魔虫が付かないように見張っていただけだ。俺と寿が一緒だと誰も近寄って来ないからな。未知、たまには甘えるのも悪くないぞ。お邪魔虫が寄って来ないように見張っているから安心しろ。寿、こじはんだ。行くぞ」
お祖父ちゃんが度会さんを連れて部屋を出て行った。
ちょっと待って。この状況で二人きりって……。
お祖父ちゃん一言余計なんだから。
「未知の顔を見れば何を考えているかすぐ分かる。おいで」
足を崩した彼が膝をぽんぽんと軽く叩いた。
「いつも未知の膝枕できどころ寝させてもらっているからな。たまにはいいだろう。安心しろ、悪戯はしない」
彼が笑っている時って、言ってることと心の中で思っていることが逆の場合が多い。
「もしかして疑ってる?」
ぎくりとした。
「図星か」
彼がクスリと笑った。
「二十分後に幹部たちが集まる。なかなか未知が来ないから待ちくたびれて呼びに行こうかとも思ったんだぞ。それでは意味がないと茨木さんに言われてしまった。時間がない。一分一秒無駄にしたくない」
彼に言われるがまま腰を下ろし、彼の膝を枕代わりに横になった。
「寝ていいぞ」
髪を撫でてくれる大きな手。おひさまみたいにぽかぽかと温かくて。安心できる心地よさにすぐにうとうとしてきて、眠くなってきた。
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