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番外編 おかえり
「表向きはうねめ祭りの取材で、青空さんに話しが聞きたいんだって。バ―バもね、この際だから恨み辛みなんでも話したらいいって。貰うものだけ貰って姿を消した父親に文句を言うためにはまずは見付けないとって」
「でもすでにまゆこさんと槇島さんに消されている可能性もあるんだよね?」
「二人とも頭がイカれているし、人を人とも思わない。まゆこさん言ってたよね。エッチするより人をいたぶりながら、爪を一つずつ剥がしながら、じっくりと時間をかけて殺したほうが気持ちがいいって。恐怖で泣く顔を見るのが何よりの快感なんだって。怖いよね、女性って。何をしでかすか分からないから」
「まゆこみたいなサイコパスがどういうわけか男性には魅力的に写るから不思議だよね。モテモテだもの。さすがにタンランって呼ばれているだけはある」
まゆこさんは奈娜ちゃんをまだ諦めてはいないはず。世間がひかりのみこに関心をなくし、ほとぼりがさめた頃に次の一手を必ず打ってくる。
「何だか雲行きが怪しいですね。急に風も出てきましたし雨が降るかも知れませんね」
「こんなに天気がいいのに?」
雲ひとつない空を見上げた。
「あと十五分後に雨雲が通過するみたいですよ」
橘さんが携帯を割烹着のポケットにしまった。
「何事もなければそれに越したことはないんですが。あ、そういえば……」
橘さんが何かを思い出したみたいだった。
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