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番外編 おかえり
「そろそろ行かないと遅刻するぞ。弁当は持ったか?忘れ物はないか?」
彼が小学生組に声を掛けて慌ただしく玄関へと向かった。
「みんな行ってらっしゃい」
チカちゃんの元気な声が聞こえてきた。
「なんでよりよってこのタイミングで来るんだ。遥香と幸が幼稚園と保育園に行きたがらなくなるだろうに」
柚原さんが額に手をあててため息をついた。
「ねえさんにドッキリサプライズするんじゃなかったのか」
鞠家さんも苦笑いを浮かべていた。
ちょうどご飯を食べていた遥香と幸ちゃん。よく通る甲高い声に、あ、チカおねえちゃんだ!すぐに気付いてご飯どころではなくなってしまった。
橘さんの頭ににょきにょきと角が一本生えていっていて、光希さんに、
「ままたん、その角しまって。顔、怖いよ。泣かれるよ」
なんて言われていた。
昨日は早起きだった太惺と心望だったけど、今日はまだ起きていない。もし起きていたら収拾がつかなくなっていた。
「チカさん、まだ寝ている子がいるので静かに願います」
「あら~~ちょっと!七海さんじゃないの。久し振り~~!元気だった?いつ来たの?」
「昨日です」
「しばらくいれるの?」
「そのつもりでいます」
「いいなぁ~~」
七海さんとチカちゃんがそんな話しをしていたら、
「ななちゃん、チカおねえちゃん、おはよー」
遥香と幸ちゃんが手を繋いでバタバタと走ってきた。
「ご飯をちゃんと食べないと大きくなれないよ」
七海さんが腰を屈めて同じ目線になって話しかけると、
「たべてきた」
「ごちそうさましてきた」
大きな声で二人が答えると、
「それなら良かった」
ホッとして胸を撫で下ろしていた。
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