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番外編 おかえり
「国井、チカ、また面倒なことにお前らを巻き込むことになるかもしれない。疫病神で悪いな」
「ハルくんは疫病神じゃないかないわよ。縁結びの大黒さまよ。自分を卑下しないで」
「チカの言う通りだ。おやっさんも鞠家も蜂谷もやりたいことがあるからデカを辞めて転職したんだろうが。蜂谷を見てみ、死んだ魚のような目をしていたのが嘘のように生き生きしている。それに鞠家も……」
「俺がなんだって?聞き捨てならないな」
にかっと笑いながら鞠家さんが姿を見せたものだから国井さんが飛び上がるくらい驚いていた。
「組事務所に向かったはずじゃあ」
「忘れ物を取りに来た。どうも最近物忘れが酷くてな。参った」
スマホと車の鍵をポケットにしまった。
「幸せ過ぎて平和ボケしているのかもな。気を引き締めないと駄目だな。国井、怒らないから何を言おうとしたのか教えてくれないか?」
「本当か?」
「疑いの目で見るな。本当だ」
追い込まれてしまった国井さん。口は災いのもととよく言うからな。ぶつぶつとなにやら独り言を口にしていた。
「鞠家は顔も性格も優しいからヤクザ向きじゃない。甘く見られて鼻で笑われてすぐに根をあげると思っていたんだが、まさか天職だったとはな」
「卯月みたいな生き方にひそかに憧れていたんだ。デカを辞めたら卯月に拾ってもらうつもりでいた。卯月なら何も聞かず俺のことを迎い入れてくれる。卯月の鞄持ちのままずっと側にいれれば本望だと思っていたが、気付けば若頭だ。人生どう転ぶか分からないな。しかしまぁよく降る雨だな」
鞠家さんが曇天の空を見上げた。
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